アクリル画を額装する際の注意点と額縁の種類

額装する場合、額も作品の一部となります。ただしあくまで作品を引き立たせる役割のため、より作品を生かす形、色、奥行き、カバーのものをしっかりと選びます。

アクリル画を額装するときの注意

アクリル絵の具はガラスやアクリル板などの面材に接していると固着してしまいます。作品を直接面材に接して額装するものもありますが、アクリル画では避けます。

額縁の種類

一般額縁・デッサン額縁・水彩額縁

紙などの平面の支持体の作品を飾ります。後述の「マット」とよばれる厚紙と一緒に使用されることが多いです。

作品の厚みが規定以上だと後ろの蓋の板が閉じませんので注意します。逆に作品の厚みが足りない場合は厚み調整材を作品の後ろに入れます。

油彩額縁・油彩本縁

張りキャンバス作品やパネル張り作品など、厚みのある作品を飾ります。FやPなどの規格以外のサイズの絵はオーダーメイドするか支持体が紙の場合パネルから外して一般額縁で額装します。

仮額縁

出展などに使われる額縁で、ガラスやアクリル板などの面材は基本的には付けません。側面をネジや釘で留める必要があるものと必要がないものがあります。

立体額縁

奥行きを備えた額縁で、立体・半立体の作品、キャンバスやパネルの側面まで見せたい作品、浮かし額装を施したい場合に使用されます。

面材で覆わずにあえて立体作品を額から飛び出させる方法もあります。

額縁の材質

木材・樹脂・アルミ・MDF※などの素材があります。樹脂製だから全てがプラスチックの様な表面、アルミだから銀色の表面かというとそういうわけではなく、木目調の樹脂製額縁や大理石調のアルミ製額縁なども存在します。

※MDF:Medium Density Fiberboard(中密度繊維板)。繊維状にした木材を、再度固めて成形し直したもの。通常の木材と違い節目や木目が無い平滑な表面で、切断時バリが出にくく加工がしやすい特徴がある。

寸法

販売されている額縁は、FやP、A判B判など、中に入る絵のサイズ表記で販売されています。一般額縁やデッサン額縁は後述のマットで調整できるため画面ぴったりの作品でなければ額装できないわけではありません。

油彩額縁などのパネルやキャンバス作品をそのままはめ込む額に関しては基本的に規格に沿ったサイズのみ販売されており、規定以外のサイズはオーダーメイドで額縁屋さんに作ってもらいます。

日本のメーカーが作成しているサイズは日本規格に沿ったもののため、フランス規格や国際規格のものとは異なることに注意が必要です。

キャンバスやパネルのサイズについては「キャンバス」で詳しく説明しています。

マット

マットとは、額縁とガラスなどの面材の間に挟む窓状の厚紙のことです。作品への影響を少なくするために中性紙で作られている物が多く、様々な色があります。

中性のテープを使うことや、中性の三角ポケットを四つ角に付けそこに入れることで作品を固定します。三角ポケットは自分で中性紙を使って作るか、市販されているマット用のものを使います。

マットを使うメリット

作品画面と面材が触れないようにする。
マットが面材と作品画面の間にあることで、面材と画面が接することなく、空間ができます。アクリル絵の具は面材と接してはいけないため、これはとても重要な役割です。
逆に描画面が面材に接してしまうようなら立体額装などの厚みのある作品でも飾れる額装にするか、面材を使わず画面にワニスの保護のみを施します。
一般的でない規格の絵の額装を可能にする。
変形で描いた場合に、作品よりも大きなサイズの額を使い、余白をマットで埋めて固定することができます。
作品の装飾に使う。
マットは様々な色や形があります。マットの使用によって、作品の印象をさらに良くすることや変化を与えることができます。

通常は四角い穴が開いた窓状になっています。他にも楕円型の窓が開いたものや、窓が2つ以上あるものもあります。

ダブルマット

マットを2枚重ねることによって枠の段差を増やすことができます。また、前面と背面で異なる色のマットを使うと枠線の様に見せることができ、マットの余白が多すぎる場合のアクセントにすることもできます。

面金・面銀加工

マットの窓の淵部分に金色や銀色の装飾を施すことを言います。

面材

額装する際のガラスなどのカバーを面材と言います。アクリル、ガラス、塩ビやPETなどの素材があり、それぞれ特徴が異なります。

アクリル

  • ガラスよりも軽くて丈夫なため大きな額縁にも使用できる。
  • ガラスよりも透明度が高い。
  • ガラスよりも割れにくいため地震の時の落下事故などはガラスよりも安全。
  • 大きなサイズだとたわみが出ることがあるが、PETなどよりは曲がりにくい。
  • PETなどより変色しにくい。
  • UVカットに特化したものもある。ただし特化したものは黄色みがかっているため作品の外観に少々影響を及ぼす。アクリル絵の具は耐光性の高い絵の具も多いため(蛍光色など特殊な色はこれにあたらない)、個人的な作品の場合はUVカット特化のものを使わなくとも、通常のアクリル板、UVカットのワニス使用、直射日光を避けることでも紫外線による作品の劣化をある程度抑えることができる。
  • 静電気で埃がつきやすい。
  • ガラスよりも高価。

ガラス

  • アクリルよりも安価。
  • 埃が付きにくく、傷も付きにくいため掃除が楽。
  • アクリルよりも割れやすい。
  • アクリルよりも重いため、大きな額装には不向き。

PET・塩ビ

  • 安価。
  • 軽くて薄い。
  • たわみやすいため、アクリル絵の具と接してしまう可能性を考えるとおすすめできない。使用する場合はアクリル画の表面に触れさせないように十分に気を付ける。
  • 透明度がガラスやアクリルよりも低い。
  • 静電気で埃がつきやすい。
  • 紫外線によって変色することがある。

フック

額の後ろには紐を付けることができ、その紐を壁に付けたフックに引っ掛けることで飾ります。フックは壁に直接打ち付けるものが基本です。他にもワイヤーによって上下の位置調節が可能なものや、ピクチャーレールというフック位置を左右に移動させることができるものもあります。

額用フックは壁に対し垂直ではなく斜め下に打ち付ける設計など、絵の重みに耐えられるよう、外れないように配慮されているため、絵を飾るときは専用のものを使ったほうが安全です。フックはパッケージなどに耐荷重が記載されています。

吊る方法は一点吊りと二点吊りがあります。一点でも吊ることはできますが、二点にすることでより安定し、平行のバランスがとりやすくなります。

額装された作品の注意点

アクリル板は傷が付きやすい。
アクリルはガラスに比べて傷が付きやすいため、掃除する時は柔らかい布で傷を付けないよう優しく拭き取ります。
上に物を重ねない。
上に物を重ねると面材に描画面が接してしまい作品が傷つくことや、面材とアクリル絵の具がくっついてしまう危険性があります。同じサイズだからといって作品同士を重ねないように注意します。
直射日光の当たる場所、高温多湿、寒暖差が激しい場所での展示は避ける。
作品や額の日焼け、劣化に繋がりますので、できる限り直射日光を避けた安定した環境に飾るようにします。
就寝時の枕元の上など、万一落ちた時に事故になるところでの展示は避ける。
大きな地震による落下などを想定し、落下した際に自分が怪我をする可能性のある場所に飾るのは避けるようにします。また小さなお子さんの事故にも注意します。
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