筆の形状とできる表現の違い

筆の形は、どのようなタッチで描きたいかによって選択肢が異なります。例えば一口に点描と言っても、短平筆(ブライト)で描く点描と、丸平筆(フィルバート)で描く点描、丸筆(ラウンド)で描く点描はそれぞれ異なったタッチ、見え方になります。

どんな形の、どんな幅のタッチで描きたいのか考えると、自分の表現に必要な筆の形のヒントになるかもしれません。

平筆(フラット)
多くの絵の具を含むので、平塗りなど、広めの範囲を長めのストロークで塗るのに適しています。筆を立ててエッジを使うことで線を描くこともできます。幅の種類もさまざまで、ムラなく平塗りしたいときは面積に合った筆を選ぶことでより筆跡を残さず綺麗に塗ることができます。
デザイン・ポスター調で描きたい時は必須と言っていい筆です。
短平筆(ブライト)
絵の具を塗りこむのに適しており、穂丈が短く四角い筆跡が出ることから強いタッチを出しやすく、通常の平筆とは違った短いストロークで描くことができます。面を塗るときは丈が短いため筆を早めに動かしながら塗ります。
丸平筆(フィルバート)
初めから平筆を使い込んだ角がとれた形状に作ってあり、先端がなだらかなカーブで初心者にも使いやすい筆です。下書き、面の塗りから仕上げまで幅広く使用でき、柔らかなタッチが特徴です。
穂丈に通常のフィルバート、柔らかく塗り重ねができ美しい入り抜きができるロングフィルバート、タッチが描けるショートフィルバートがあります。
刀先型筆(ダガー)
穂先がナイフ上にカットされた長い筆で、線の幅の強弱をつけた曲線、長いストロークでリボン状の帯などを描くことができます。毛先と根本側に別の色を付ければグラデーションの帯を描くこともできます。
扇形筆(ファン)
乾いてない絵の具の上を撫でてぼかすことや絵の具を直接つけてかすれさせながら描くことができます。キャンバス上に乗せた濃い目の絵の具の上で左右に素早く撫でながら動かすと水のにじみでは出せない独特のぼかしができます。
直接絵の具を乗せる場合、筆自体が薄いことから絵の具の含みは弱いのでパレットから色を頻繁に取りつつ進めます。アクリル画では絵の具がすぐ固まり不溶になるので、ぼかす時間が足りないときは乾燥が遅い絵の具や乾燥を遅らせるリターダー、メディウムとの併用をおすすめします。
丸筆(ラウンド)
点描や線描などの書き込み、太い線から細い線まで幅広く表現できる筆です。これ一本で仕上げまでできてしまう自由さの反面、力を入れて描いたら思ったより太い線になってしまうことや根元の水を含ませすぎて薄くなってしまうことがあるので、力の強弱や水の量に気を付けたい筆でもあります。
スクリプト/リガー/面相筆
穂先が長く、シャープで細く長い線を描くことに適しています。思った通りのラインを引けるようコシがあり絵の具の含みがいいものを選びます。面相筆に多い軸の部分が竹でできているタイプや金属の金具に木の柄がついているものがあります。
たまに軸の内部に水がたまっていることに気付かずに線を引いていて、内部から水が垂れてきてせっかく引いていた線が水でぼけてしまう事故が発生します。軸に余分な水が溜まっていないか注意が必要です。
斜平筆(スラント/アングル/アンギュラー)
平筆を斜めにカットした独特な形で幅広い表現が可能です。エッジで線を描くことや面で塗りを行うことができ、直線や輪郭取り、片ぼかしにも向いています。トールペイントでは両側に別の色を付けて筆のグラデーションでバラの花びらを描くことにも使われます。
キャッツ・タン(オーバル)
猫の舌のような形から名前がついています。絵の具含みがよく、筆全体を使ってしなやかに長く広い面を塗ることや尖った先端を使って細いタッチで描くことができます。ぼかしにも向いており水彩風に描く際に使用したい筆です。
ステンシルブラシ
絵の具をつけて円を描きながらぼかすことやたたきながらタッチをつけることができます。画面が傷つきやすいのでそこを加味しつつ使います。
刷毛
広い面を塗るのに適しています。筆にそのまま絵の具をつけるとまだらになりますので、かすれやムラを意図的にだしたい場合以外は筆を一度水につけた後布で水気を切ってから使うと絵の具の含みがうまくいきます。
左右で違う色を付けて画面上でなじませるグラデーション表現の使用にも向いています。グラデーション技法については「グラデーションに塗る」で詳しく説明しています。
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