アクリル絵の具の開発
アクリル絵の具の開発には、メキシコ壁画運動が深く関わっています。
メキシコ壁画運動とは、メキシコ革命の流れから始まった1920年代の絵画運動です。
革命前、ポルフィリオ=ディアス(Porfirio Diaz)独裁政権時に行われた近代化政策は、富裕層の白人や外国人投資家が利益を得る政策であり、インディヘナ(indigene:ラテンアメリカ先住民族)、インディヘナと白人の混血のメスティーソ(Mestizo)、農民達など多くの労働者が抑圧されていました。大土地所有者に低賃金で働かされていた農民達や抑圧されていた労働者たちが農地改革や民主的政治を目指し、革命を起こしたのがメキシコ革命です。
革命後、政府はインディヘナ文化とヨーロッパ文化が混じりあったメキシコ国民、国家のアイデンティティ確立を目指しました。 1920-1924年の文部大臣であったホセ・バスコンセロス(José Vasconcelos)は、公共の壁面を画家に開放し、画家たちによる壁画の制作が始まりました。この際、字が読めない人でもわかりやすいように、壁画という形がとられました。
壁画という屋外の環境に耐えられる絵の具が求められ、より耐久性のある樹脂絵の具の開発がすすめられるようになっていきました。後に溶剤系アクリル絵の具が開発され、次いで水性エマルション型のアクリル絵の具が開発されました。