アクリル絵の具でマットな感じに描くには

どんな絵に向いている表現か

不透明で艶なしの絵の具でムラなく塗り、色面を組み合わせることで、ポスターのようなデザイン画を制作することができます。

デザイン画やマットな色調のイラストはパソコンで描けばいいと思われるかもしれませんが、微妙な筆跡の跡、支持体の凹凸、モニターの光の有無、彩度の範囲など、アナログならではの制限や自由度からくる違いがそこには存在しています。

また作品として作る場合に実態があるというのは「一点物である」という強みがあります。

もちろんデジタルにはデジタルの利点があります。イラストレーターやデザイナーにはテクスチャをアナログで作り、それをスキャンしてデジタルのイラストやデザインと組み合わせる人も多くいます。適材適所、自分の表現したいものに応じて道具を使うことで表現の幅が広がります。

水が多い場合よりもムラが残りにくく色が濃くなる。

絵の具の種類

絵の具はアクリルガッシュを使います。アクリルガッシュはすべての色が不透明なので、ポスターのようなマットな色面の分割で描く表現に向いています。

下の色を隠して上塗りがしやすく作業効率が良いことも利点です。

絵の具の濃度

絵の具にとろみがつくぐらいに水を加えます。この濃度で例えられるのがとんかつソースなどです。目安としては平筆で紙に描いたときに絵の具の伸びが良く、すぐに途切れず、水分が原因の筆跡のムラが出来ないぐらいの濃度です。

他の目安は絵具皿の上で筆を横断させたときに一瞬筆跡が残ります。

混ぜるときは円状に回すと泡が立ちムラの原因になるため、平行線上に動かして混ぜます。

支持体

大体どのようなものにも描けますが、紙をつかうのならケント紙がおすすめです。

ケント紙は表面が平滑で溝がないため、直線や図形を綺麗に描くことができ、紙の目によるかすれなどが起こりにくいです。

筆の種類

素材はナイロンなどの丈夫でコシのある筆か、デザイン用の羊毛の筆を使います。

形は面相筆と平筆数本を使います。平筆は絵具を伸ばしやすいためアクリルガッシュを使ったとき筆跡や厚みなどのムラが残りにくいです。

いくつか幅の違うものを用意すると作業がしやすくなりより美しい平滑な塗りをすることができます。

詳しい筆の形や材質、用途については「」の項目でそれぞれ説明しています。

描くときのコツ

絵によって手順は違うため、ここではコツを紹介します。

絵の具は丸い絵具皿で溶く。
マットに描く場合、絵具を多く消費するためペーパーパレットのような仕切るものがなく絵の具が広がるものは向きません。また仕切りがあっても梅皿などは枠の大きさが小さいためこれも適しません。
以上のような理由からマットに描くときは一色につき一つの丸皿で溶くのが望ましいです。ただし少ししか使わない絵の具はパレットや梅皿でも大丈夫です。
絵の具皿の絵の具を使わない間はラップをかけておく
アクリル絵の具は短時間で乾くため、溶いてそのまま放置しておくとすぐに固まってしまいます。
しばらく使わない絵の具は絵の具皿にラップをかけておくことで絵の具の乾燥を防ぐことができます。
またラップをかける前に軽く霧吹きで絵の具の表面を湿らせておくとより効果的です。
混色の絵の具は多めに作っておく。
マットに描く場合に混色した絵の具を切らしてしまうと厄介です。濡れ色と乾き色が違うため混色の配合度合いが分かり辛く、再度同じ色を作ろうとしても調整に手間取ります。
水彩風ならばぼかしなどである程度ごまかしようがあるのですが、マットに描いた場合配合の違いが顕著に表れます。
別紙に試し塗りをしつつ画面と比較して配合を合わせることはできますが、手間も時間もかかりますので最初から余るぐらい作っておいた方が安心かつ効率的です。
下書きの鉛筆、シャーペンの濃度はB~H程度を使う。
下書き用のシャーペンや鉛筆に3Bや4Bの様な濃い濃度のものを使ってしまうと、絵具を塗った際に黒鉛が筆に引っ張られて画面を汚すことや絵の具を濁らせてしまう原因になります。アクリルガッシュは不透明のため目立ちにくいとはいえ避けた方が良いです。
ならばできるだけ硬い鉛筆を使えばいいかというとそうでもなく、硬すぎる鉛筆は紙をえぐって傷つけてしまう可能性や、修正しようとしたときに消しづらい可能性があります。
筆圧が弱く描き直しをあまりしない人ならば大丈夫かもしれませんが、描き直しをする人にはあまりおすすめできません。 以上のような理由からB、HB、F、Hのあたりの硬さの鉛筆を使うのがおすすめです。
背景色は明るい色なら一番初めに全面に塗る。
あらかじめ背景色が決まっている場合は最初に全面に塗ってその上から重ね塗りをしていくと効率的に描くことができます。ただし、黒などの濃い色を背景に塗ってその上に明るい色を重ねると色が透けてしまうことがあります。
透けてしまった部分は二度塗りが必要となります。そのため背景に濃い色を塗る場合は、明るい色を先にはみ出して塗ってから背景色を塗るか、背景色をなるべく明るい部分にはみ出さないように塗っておき、明るい色の二度塗り範囲を少なくすることが必要です。
自分のやりやすさや状況に応じて効率のいい手順で塗ります。
また暗い色の絵の具を塗った上から下書きをする場合は、消しゴムなどでこすると色が変化することにも注意しておきます。詳しくは「マットな画面をこすると」で説明しています。
面積に合った筆を使う。
面積に合った筆を使うことで、均一で綺麗なベタ塗りをすることができます。大きな平筆と面相筆しか持っていないと、細かいところを塗るときに面相筆ですべて塗ることになり、筆跡が残りがちになります。
幅の違うものを数本用意することで、綺麗で均一な塗りが実現できます。マットな塗りは筆跡にムラがあるとそこに影が落ちかなり気になります。逆に言えばムラがないだけで作品の完成度をグッと上げることができます。
直線や円などの図形は烏口、溝引き道具、マスキングテープを使う。
下書きをしていても、直線や円を筆で引くというのは中々困難です。そのため、直線を引きたい場合はマスキングテープを張って覆うか、烏口と定規を使って引くか、溝引きをすることで綺麗な直線を描くことができます。円を描く場合は烏口コンパスを使うことで綺麗な円を描くことができます。
溝引きの方法は「溝引きで直線を引く」で説明しています。
烏口の使用方法は「烏口を使う」で説明しています。
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