筆はその材質によって描いたときの滑らかさ、力の使い方、絵具がかすれた時やにじんだ時の筆跡など、使い心地やタッチが全く異なります。ここでは代表的に使われている筆の材料についてご紹介します。
合成繊維
総合的に見てアクリルに一番適している筆です。ナイロンなどがあります。絵の具の含みが天然毛に比べてやや劣ります。
昔は安価であるだけというイメージが付いていましたが、毛の表面に加工を施すことや様々な長さや太さの繊維を混毛することで、天然毛に近い品質の筆を開発しているメーカーもあります。傷んで毛がカールしてきたら買い替えることをおすすめします。
リセーブル(ホルベイン)
ホルベインから販売されている特殊合成繊維筆で、合成繊維一本ずつに天然毛に近い凹凸をつける特殊処理を施すことや、太さの異なる毛を混毛することで天然毛に似たコシや絵の具の含みを持たせています。豚毛のようにコシが強い太いリセーブルで作られたハードリセーブル(Hard RESABLE)から、天然のイタチ毛との混合筆パラリセーブル(PARA RESABLE)まで様々な種類があります。
セーブル
水彩画で使われる筆の中で高品質かつ代表的なもので、イタチやテン、コリンスキーなどを指します。
全体の特徴として絵の具の含みと弾力がよく、穂先がまとまりやすいのが特徴です。イタチ系の中でも特に高価なシベリアから中国東北部に生息するコリンスキーは、他のイタチより毛足が長く、毛は紡錘形をしています。柔軟なコシ、絵具の含み、穂先のまとまりが他の毛よりも秀でているため、天然毛の中でも最上級の筆とも言われています。
シベリアンコリンスキーで穂先が長いものだと一本二~三万越えするものまであります。
羊毛
デザイン用の刷毛や筆によく使用されます。柔らかく細い毛を持ちナイロンより水や絵の具の含みが良く、耐久性や穂先のまとまりにも恵まれイタチなどより安価なことからデザイン・ポスター調で平塗りする人も使用しています。
ただし丈夫とはいえアクリル絵の具での使用ではしっかり手入れしないと縮れや抜け毛、切れ毛が起こるので注意してください。
リス
コシはないですが繊細で柔らかい筆で、絵具や水の含みが良いことから水彩画に向いています。一回絵の具をつけるだけで広い面積を描くことができます。穂先のまとまりも良く、にじませて描くのに向いています。
馬
よく使われているスタンダードな筆です。全身の毛が筆に使われますが部位ごとに性質が違います。
豚毛
粘り気のある油絵の具に最も使われている筆なだけあり、強いコシや弾力があります。毛先が枝毛になっていることから絵具や油の含みがよいのが特徴です。水彩用もあります。
毛がカールしていて、そのカールの向きを職人さんが合わせることで、筆のまとまりを出しています。毛の原産は中国産が多く、重慶産の毛を加工したアメ色のものが高品質とされています。
カスレを出したい場合練りの硬いアクリル絵の具を選んだほうがタッチを生かせます。
狸(ラクーン)
油彩用が多いですが水彩用も売っています。毛が柔らかく絵の具の含みが良いのでソフトなタッチで描くことができます。
マングース
中硬毛に位置しており、イタチよりも固く豚毛よりも柔らかい筆です。