アクリル絵の具と油絵具は併用できるのか
アクリル絵の具で描いて、完全乾燥させた上から油絵具で仕上げることができます。 油絵具を上塗りするのはアクリル絵の具の層が完全に乾いて水分が抜けきった状態でないといけません。
注意点
- キャンバスは油性キャンバスではなく油彩画・アクリル画両用キャンバス(ユニバーサルキャンバス)を使う。
- 油性キャンバスにアクリル絵の具やジェッソなどの水性の絵の具を使うことはできません。必ず両用キャンバスをつかうようにします。
キャンバスの種類などについては「キャンバス」でも詳しく説明しています。 - 油絵具の層の上にアクリル絵の具を乗せない、油絵具とアクリル絵の具を混ぜない。
- アクリル絵の具も油絵具も顔料と展色剤(顔料を支持体に固定するためのノリとなる材料)を混ぜたものです。その名の通り、アクリル絵の具にはアクリルエマルション(水中にアクリル樹脂を分散させたもの)が、油絵具には乾性油が展色剤として使用されています。
水と油は混ざりませんので、絵具は混ぜないように注意します。油絵の具の上にアクリル絵の具は乗りません。仮にアクリル絵の具の水の量を少なくして塗れたように見えても剥がれ落ちる危険性があります。
アクリルエマルションなどのアクリル絵の具の成分については「水性エマルション型」でも説明しています。 - 指で触る程度の乾燥ではなく完全に乾燥するまでしっかりと置く。
- アクリル絵の具は、指で触れる程度の乾燥はとても早いですが、水分が抜け切る完全乾燥には2~3日かかることがあります。ジェッソなどの下地材も同様です。モデリングペースト等の盛り上げ剤の乾燥となるともっとかかります。
完全乾燥していない面に油絵具で描くと後の劣化原因になるため、劣化させたくない、長期間保存したい作品の場合は余裕を持った制作スケジュールでアクリル絵の具をしっかりと乾燥させます。
アクリル絵の具と油絵の具を併用するメリット
アクリル絵の具と油絵具の併用は、アクリル絵の具の欠点を油絵具に、油絵具の欠点をアクリル絵の具に補わせることができます。油絵だけだと手間がかかりハードルが高い、アクリル絵の具だけだと色や艶の深みに物足りないなど感じる場合は、併用してみるのも手です。
- 描画時間の短縮。
- 一番大きなメリットです。アクリル絵の具がエマルション中の水分が蒸発して樹脂が固まるのに対し、油絵具は酸化して油が固まります。水分の蒸発によって固まる時間のほうが短いため、アクリル絵の具は油絵の具よりもすぐに次の作業に移ることができます。
アクリル絵の具を下地に使えば、グレーを使いモノクロのグラデーションで描いたモチーフに、上から透明度のある有色の絵の具をかぶせる、グリザイユ画法の時間短縮にも役立ちます。
また、道具に関しても、油彩は溶き油の種類の選択やブラシクリーナーの処理などの作業がありますが、アクリル絵の具は基本水と絵の具だけで足りるため、全体的な道具の準備やメンテナンス時間もアクリル絵の具のほうが短いです。 - 色に深みを出す。
- アクリル絵の具で油彩風に描く方法は様々な場所で提示されていますが、それでも表現上、アクリル絵の具が油絵具の代わりとなり辛い点の一つに色の深みがあります。
アクリル絵の具は水分が蒸発するため体積が減りますが、油絵具はアクリル絵の具と違い体積が減らずにそのまま固まり、顔料が層の中に分散した状態で保持されます。そのため絵の具層の光の反射具合が複雑になり深みのある色を作り出すことができます。 - ぼかしやなじませとスピードの両立
- 一般的なアクリル絵の具でぼかしながら描きたいと思ったとき、乾燥する前に次の色を置かなければいけないため、ある程度のスピードや計画性を求められます。油絵の具は時間がたってもぼかすことやなじませることができますが、上から新しい色を乗せたい場合に、下の色が混ざってしまい濁ることがあります。
ベースの色をアクリル絵の具で置いておいて、それを目安に上から油絵具をぼかしながら乗せることで、お互いの利点を生かすことができます。