グレーズ技法(ウェット・オン・ドライ)の紹介

どのような表現か

グレーズ(glaze,glazing)とはうわぐすりをかけることや上塗りをすることを意味します。グレーズ技法はグラッシ(glacis:フランス語)技法やウェット・オン・ドライ(wet-on-dry)ともいいます。透明性のある絵の具の層を重ね合わせることで、単色の塗りでは出すことのできない深みのある色を作ります。油彩画や水彩画でよく使われる技法です。

絵の具の種類

透明度の高いアクリル絵の具を使います。アクリルガッシュは不透明なため向きませんが、メディウムや水で多く溶く場合は使うこともできます。通常のアクリル絵の具でも顔料が多く透明度が低い絵の具にはメディウムや水で透明度を高めます。

通常のアクリル絵の具とアクリルガッシュの違いについては「アクリル絵具とアクリルガッシュの違い」で、アクリル絵の具の透明度の記載については「アクリル絵の具に使われる表記一覧」で説明しています。

グレーズ技法の生かし方とポイント

元の絵。
グレース技法を生かして調整
色に深みを出す
単色の色面でも、何色か透明色を重ねて見せると色に深みや奥行きがでます。(例:青の絵の具層の上に黄色の絵の具層を重ねて緑色を作る、赤の絵の具層の上に青の絵の具層を重ねて紫を作る、など。)
また、それぞれの層の濃さを意図的に変えることで、下の層の色味が強い部分、上の層の色味が強い部分などを作ることができます。
色味を寄せる
モチーフの色をもう少し黄色に寄せたい、青色に寄せたいなど、色味を移動させたいときに、上から薄くグレーズすることがあります。
単色で影を描いた上から色を乗せる。
グレーや茶色でモノクロ写真のように描いた上から固有色を乗せて色味を出すとグリザイユ画法になります。
画面全体の色味を統一させる。
画面全体に色の層をかけることで色味の統一ができます。そのままだと画面がかすんでしまうことや暗くなることがあるので、必要なら上から加筆します。
透明色の重なりを生かして色数を増やす。
写実的表現のみでなく平面的表現にも使うことができます。透明性を持つ絵の具で図形を描き重ね合わせることで、重ねた部分が別の色になります。数色使い複雑に重ねれば重ねるほど多くの色が重なり様々なグラデーションを生み出します。
重ね合わせる色によって濃度を変える。
黄色と青の層を重ねれば緑になりますが、青が濃すぎると濃さに黄色が殺されてしまい思ったよりも色が変わらない可能性があります。その場合は、水やメディウムを足して青色を薄くすることや、黄色を濃い目に溶く、何度か層を重ねることで調整します。
水を足すのかメディウムを足すのか。
絵具の定着率やムラの点からメディウムを足した方が良いです。(ただしあえてムラを出したい場合は別です。)
メディウムも、流動性の高いメディウムを混ぜるのか、低いメディウムを混ぜるのかで筆跡の表現が変わります。絵の具よりも流動性の高いメディウムを使い薄い筆跡を作ることもできますし、流動性が変わらないメディウムを使って盛り上がった筆跡を作ることや、できるかぎり平滑に塗ることで薄いカバーをかけるようグレーズすることもできます。
メディウムによって描き心地も変わりますので、自分の用途に合わせた粘性や透明度のメディウムを使います。
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